残念な効果

 非常に残念な事だが、悪口というのは効果がある。
 自分で「ここが欠点かな?」と感じてるところを刺されれば「やっぱり駄目なんだ」って確信に繋がってしまうし、特に気に留めてない部分でも「これは変だ」と権柄ずくな大声を出されれば「ひょっとしたらそうなのかも」と以後意識してしまうようになる。
 これらの最も悪い性質は、完全に間違っていない点にあるだろう。
 古くから理屈と膏薬は何にでもつくと言う。難癖つけるつもりなら、それこそなくて七癖あって四十八癖。文句なんぞどうとでも吐けるのだ。
 自分の事ならば「うっせーばーか、人様にイチャモンだけつけてマウンティングした気になってんじゃねーぞ、ばーかばーか」と遠吠えしたり、「やっべ、俺めっちゃ妬まれてんじゃん。メシウマ!」と叫んで遁走したりで済ます。僕ァ心が弱いからね。護心術は心得ているのだ。
「臭いものに蓋」は至言である。

 でも性根が真面目で善良な人ほど、どうでもいい相手の何でもない言葉に囚われて懊悩してしまうように見える。俺が「すげぇ!」と感嘆するような人たちがそうなるのは、とても勿体のない事だと思う。面の皮も心の皮も厚い言う側は、労力なぞまるで費やしてないだけに尚更だ。
 だからそういうのを言われて気にしてしまう方々は、ひとつ覚えておいて欲しい。でもって忘れないでいて欲しい。
 そうした悪口雑言は一を拡大して述べているだけで、他にある九のいい部分を意図的に無視している。そして取り沙汰された一も含めた十を好く人がいるのだって事を。

 SNSが台頭し、色んな人の色んな意見が容易に耳に届くようになっている昨今だが、しかし声が届くほど近い距離にいるからといって、関係性が近いわけではない。
 そこんとこを言う側のみならず聞く側も意識すべきじゃあなかろうか。
 つまらん一言で何時間も悩むくらいなら、きっぱりさっぱりブロックなりミュートなりしちまえばいいのだ。いちいち相手をしたり、わざわざ会話したりする必要なんてどこにも欠片もないんだよ。

 人間の自由な思想思考を禁じるなんて不可能だし論外だ。言論の封殺などどんな権力者にすら成し得なかった仕業だ。
 でもそれを承知の上で思う。
 俺の友人にそういう悪意をぶつける奴には、あらゆる行動がキートン山田の声でナレーションされる呪いをかけてやりたい。
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下衆の勘繰り

 友人から電話があった。
 なんでも先日深夜、職務質問を喰らったのだそうである。

「日本vsポーランドを見てたんだけど、前半終わって喉渇いたんで、家出て近所の自販機に行ったのよ。で、ちゃりちゃり小銭投入してたら後ろから『ちょっといいですか』って言われてさ」

 聞けば友人宅の近辺で無人の車が燃える事件があったものらしい。
 偶発の事故とは到底思えず、警官は発火時刻前後で近隣を見回っていたのだという。

「サッカー見ててハーフタイムで抜け出してきたんですよ、っつー話して帰ってきたんだけど、やっぱ別れ際に訊かれたね。『試合どうですか? 得点どうなってます?』って」

 なので「0-0で折り返して、後半どうなるかって感じですね」って内容を細かく語ってやったぜと、微笑ましく結びかけたので言っておいた。

「いや君それ、本当にサッカー見てたか裏を取られたんぞ」
「マジかよ、日本の超警察優秀だな!」

 その後当然のように、お前は他人を疑い過ぎである、穿ち過ぎであると叱られた。
 いやしかし、話が面白く転がる方向につい働いてしまうのが想像力というものではあるまいか。

圧倒的共感

 ふとした弾みで友人と、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の話になった。実に懐かしい。
 キルスティン・ダンストのクロウディアは美しかったという点で意見の一致を見た後、ふと余談に及んだ。
「まあもし仮に自分が吸血鬼になったとしたら、まず何をするよ?」
「食生活を改善する」
「……お前と話してると、何で大喜利みたいになるんだろうな」
 うん、俺もすごくそう思った。

細瑕を残す

 拙作『羨望剣犬笛』が、アルファポリス第4回歴史・時代小説大賞にて大賞を頂戴いたしました。
月の好い日は窓を開けて』が第8回ホラー小説大賞を受賞した時にも述懐したのだけれど、「お前のしてきた事は全くの無駄なんかじゃあなかったんだよ」と認めてもらえたような心地で大変に嬉しい。
 無為に書き連ねてきたようで、引っかき傷くらいはどこかに残せていたのだと。ちょっぴり救われたような心地になる。
 というか選考概要で結構褒められてますよね。褒めてもらっちゃってますよね。ひゃっほう。相変わらず「もっと長く書け」って釘を刺されてはいるのだけれど。

 書いたものに何一つ反響がなければ、俺はここまで物語を綴り続けなかったかもしれないと思う。
 日々のやり取りから様々を得て、様々に支えられて来たのであると思う。
 時間と共に俺の上を過ぎていったそういう素敵なものたちに、素敵な人たちに、深く感謝を捧げたい。
 ありがとうございます。そして、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 あ、こらそこ嫌そうな顔をするなこんちくしょうめ。

 ちなみに前回と同じく、入った金でまず父母と古馴染に食事を奢ってくる予定である。
 人間関係なぞ、美味い飯が絡めば大概は上手く回るのだ。

君の瞳は

 母の誕生日が近いので、ケーキを手土産に昨日実家に顔出しをしてきた。
 ところでうちの母は嘘歌の名人である。
 歌詞を微妙に間違えて覚えてそれを熱唱し続けるものだから、俺は「津軽海峡冬景色」なんだか「津軽海峡雪景色」なのだかわからなくなってしまう始末だ。
 だがこれは「間違って覚えている」と気付けている例なので、まだいい。
 しかし昨夜は思わぬ地雷型洗脳が発覚した。

 飯時につけてたテレビでね、堀内孝雄が歌ってたんですよ。「君の瞳は10000ボルト」って。
 そんで「あれ?」って思ったんです。俺の中じゃ「君の瞳は100万ボルト」だったからね。もしやこれは、と母に訊いたのさ。
「なあ母」
「何?」
「君の瞳は何万ボルト?」
「100万ボルトでしょ」
 やはり貴様の仕業かゴルゴム。
 その後父が帰宅したので、そちらへも質問してみた。
「Hey dad!」
「uh-huh?」
「君の瞳は何万ボルト?」
「100万ボルトだろ」
「Yeah!」
 なお母上は「1万では電圧が低いのではないか」「刺激が足りないのではないか」等々ぼやいておりましたとさ。
プロフィール

鵜狩

Author:鵜狩
鳴かぬなら 鳴くのにしよう 不如帰

 小説家になろうにて物語を書き撲っております。

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