馬鹿兄弟

 地の文なしの会話劇。
病は君から』本編終了からしばし、シンシアとアンリの関係がプラスマイナスゼロ程度に修復され、ハギトとアンリがそこそこ仲良くなった頃合のお話。
 よって本編未読では意味がわからないと思われます。またキャラクターイメージを損ねる可能性があるのでご注意ください。
 無論シンシアが協力してやれと言ったのは復縁の取り持ちやその為の場の誂えに関してであって、斯様な馬鹿話ではございません。
 *


「真面目な話、お前、どうなんだ?」
「どうって何がだよ。意図が掴めないけど何の話だ?」
「姉さんを含めて三人も女を囲って、誰にも手を出してないって事はないだろう? それぞれどんなふうにしてるんだ?」
「……お前って王子様の癖に、意外と下世話な事訊くのな」
「うるさい」
「ああ、シスコンだからお姉ちゃんの事が気になったりするのか」
「違う! 断じて違う!」
「はいはい」
「いいから白状をしろ。さもないと義兄上って呼ぶぞ」
「いやそれ自爆技だからな。というか人のそんな話に興味あるのか?」
「なくもないからこう言ってるんだ」
「うーん……。……まあ、仕方ないか。まずタマちゃんはだな」
「ああ、あの飯炊きおんぐふ!?」
「お前それ以上調子に乗った台詞吐いたら殴るぞ」
「もう殴っただろう!」
「もう一発殴るって意味だよ。分かれよ」
「ご、ごめん」
「とにかく、タマちゃんって足が綺麗なんだよ。ふくらはぎからふともものラインとかぐっとくる。タマちゃんの反応もいいから、気が付くとそこばっか撫で回してる。女の子の体の一部だけを愛好する奴の気持ちが理解できそうな昨今だ。でもってあの子、色々と尽くしてくれるんだよな。自分から上になって一生懸命動いてくれるとか。だけど途中で力入らなくなって、くたってもたれてきて、そのまま形勢逆転で俺に突き上げられたり」
「お前って、結構好色なんだな……」
「それから息も絶え絶えで『ハギトさん、上手すぎです』なんて囁いて、鎖骨の辺りを甘噛みしてきたりする。絶対お世辞だとは思うけど」
「言われて悪い気はしない、か」
「うん。凄く虚栄心が満たされる」
「ひょっとしてお前、上手く手綱握られてるだけなんじゃ?」
「だよなー。やっぱそんな感じだよなー。タマちゃんってばあれで結構策士だし。でも最中ずーっと甘い声で、『好き、好きです』なんて囁かれてみろ。深みにはまるぞ。溺れるぞ。何より綺麗なお姉さんに手玉に取られるとか、ある意味本望だろ」
「……そういうものなのか……?」
「そういうものなんだ」


「逆に俺がいいようにしちゃってる感じなのがナナちゃんだ。あの子、基本的に『ハギがしたいって言うから仕方なく付き合ってあげてるんだからね』みたいな態度で素っ気ない素振りなんだけどさ。全身から構ってオーラを出してるんだよな。ついでにちょっと強引とか少し手荒とか後ろからとかが好きみたいで、もう睨んだり突っかかってきたりするのも、全部反撃してもらう為の前フリにしか見えない。おかげでなんか変な方向に目覚めそうでヤバイ」
「変な方向?」
「……。白状すると、緩く手を縛ったりとか、目隠ししたりとか。ナナちゃんってば、『こんな事していいのは僕にだけだからね。シンシア様やタルマ様には駄目なんだからね!』なんて受け入れてくれちゃうからもんだから」
「やっぱりお前って、かなり好色なんじゃ……?」
「しょうがないだろ。しょうがないだろ! そりゃ我に返るとなんか後ろめたい気持ちになるんだけどさ、でも顔真っ赤にして目を潤ませたナナちゃんに、『……もっと』なんて胸を押し当てながらおねだりされてみろ。健全な男子高校生なら流されるって。絶対流されるって。我慢できる方がおかしいって!」
「喚くのはいいけど、その女の言う事だけは守れよ。姉さんにはそういう事するなよ。絶対だぞ!」
「やっぱりシスコンじゃないかお前」
「う、うるさい!」


「でもってラストはそのシンシアなんだけど」
「う、うん」
「彼女についてはノーコメントで」
「なんでだよ!? それが本題みたいなものだろう!」
「そうやってシスコンががっつくからだよ。というか、シンシアの事はなんか他人に言いたくない」
「……」
「……」
「……」
「……。うー、あー……まず、前提としてだな」
「前提として?」
「シンシアは可愛い」
「知ってる」
「すごく可愛い」
「知ってる」
「それだけじゃなくて凛々しくて格好いい。なのにくっつき魔で恥ずかしがりだ。だからこう、ぎゅっと抱き合って髪撫でたり頭撫でたり体のラインをなぞったり、人肌の安心感みたいなのをお互い堪能してる事が多い」
「……」
「あっちはもうそれだけで満足みたいなんだけど、いちゃいちゃしてるうちに俺の方ががたまらなくなって襲っちゃう感じ。そうするとあの子、必死に我慢して反応を押し隠そうとするんだよな。両手で口を抑えたりとか。つい嗜虐心を煽られて、誠心誠意で優しく優しくいじめ倒す事になる」
「……」
「だって普段は理知的で冷静なシンシアがさ、俺に組み敷かれて可愛く女の子の声出しちゃうんだぜ。あの綺麗な肌が花びらみたい桃色に染まって、あの澄んだ瞳がとろとろに蕩けてくんだ。そのうちいつもの『馬鹿め』が『ばかぁ……』になっちゃったりして、正直滅茶苦茶興奮する。俺の事しか見えないようにしちゃいたくなる。もう朝までずっとコースだ」
「ちっ」
「堪えきれなくなって、くぅって仰け反った時の首筋が本当に綺麗でさ、思わずキスマークつけちゃったりとかな。そうやって好き放題しちゃった後は『この、ケダモノめ』って叱られて、それからおでこにちゅーされたりする」
「ちっ!」
「だけど俺ばっかりが悪いんじゃないと思うんだ。終わってから全身で擦り寄って甘えてくるシンシアにだって責任はあると思うんだ。そりゃ『もう一回!』って流れにもなる。俺はケダモノなんじゃなくて、ケダモノにされてるんだ。シンシアが可愛すぎるのが全部悪い」
「他人の惚気で胸が一杯になるっていうのは、生まれて初めてだよ」
「そうか、貴重な経験をしたな」
「……」


「とまあ俺の恥を晒したわけだけど、なんかこの事知られたら後で怒られそうだけど、そっちこそどうなんだ。経験だけで言えば、俺よりよっぽど重ねてるんだろ?」
「なんだよ。お前だって人の事に興味あるんじゃないか」
「いやだってさ。俺、こっちの例を全然知らないから不安なんだよ。ひょっとしたら俺の普通ってこっちじゃおかしな性癖で、皆我慢して合わせてくれてるだけなんじゃないか、とか」
「好色なだけじゃなくて意外に小心なんだな」
「うっさい。いいから早く語れよ。俺だけに喋らせて自分はだんまりとか卑劣だぞ。『最愛の我が義弟よ』とか呼びかけるぞ」
「やめろよ気色悪い。大体それも自爆だろ!」
「自爆って言うかあれだな、お前とノノを一緒に扱うのはなんか嫌だ」
「僕をク族なんかといぐふ!?」
「お前少しは学習しろよ。本気でちょっとは学習しろよ。で、結局どうなんだ。殴られついでに白状しちまえ」
「ぼ、僕は、その」
「なんだよ。そんな恥ずかしがるくらいいちゃついてたりするのか」
「するか! そんな真似するものか! 至って普通だ。見目のいいのを呼び出して、適当に触って入れたくなったら入れて出して終わりだ」
「……」
「な、なんだよ!」
「いい加減にしろよこのヘタレプリンス。お前はヘタレ王国のヘタレ王子か」
「う、うるさいうるさいうるさい! お前みたいにべたべたべたべたしてる方が異常なんだよ! 同じ寝室で一緒に眠ったりして、寝首を掻かれたらどうするんだ」
「でも異常とか言って、実は羨ましいんだろ」
「そんなわけあるか!」
「知ってるぞー。ステラのお母さんに、それとなくラブコールしてるって知ってるぞー。気になってんだろー。向こうもお前の事、何くれと気にかけてくれてるみたいだしな」
「なっ!?」
「上手く関係を修復したくて、それで参考にって探りを入れに来たんだろ。実は俺、『できるだけアンリに協力をしてやってくれれ』ってシンシアに言い含められてるんだ」
「ま、またあの姉さんは!」
「うん、ちょっぴりお節介だなとは俺も思わなくもない。でも考えてみろ。それがなかったら俺、お前にこんな赤裸々な話絶対しないぞ」
「ぐ……」
「あとやっぱさ、子供には父親と母親がいた方がいいって思ったんだろうな。俺たちが傍にいるけど、それは結局代わりでしかないし。どっかの誰かがやらかした所為で、お姉ちゃんは後始末が大変だな」
「ぐぐ……」
「時に鬱陶しく感じるかもだけどさ。でもこういう家族の気遣いとか愛情とかって、本当は凄くありがたいもんなんだからな」
「……そういう、ものかな?」
「そういうものだよ。お前もある日いきなり別世界に引っ張りこまれて、天涯孤独になってみれば分かる」
「ご、ごめ──」
「謝ったらまた殴るぞ」
「……」
「ま、今の俺にはこっちにも、ちゃんと家族がいるんだけどな!」
「結局嫁自慢か! そろそろ僕がお前を殴っても許される気がしてきたぞ」
「お前もその家族に含まれてるって言ってるんだよ。いい加減分かれ、馬鹿め」
「あ」
「気に入らないとこもそりゃあるけどさ。シンシアの弟だからってだけじゃなくて、それなりに大事に思ってるんだぜ」
「……ふん」
「なんで大人しく諦めて、お節介を受け取れよ、愚弟」
「まったく。姉さんともども押し付けがましいんだよ──義兄上」
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

鵜狩

Author:鵜狩
鳴かぬなら 鳴くのにしよう 不如帰

 小説家になろうにて物語を書き撲っております。

FC2カウンター
Twitter
カテゴリ
検索フォーム
リンク
月別アーカイブ